毎年9月恒例のカウラ市の桜祭りを目指してシドニーにから西へ西へと4時間ドライブ!
こんにちは、シドニーナビです。日本ではそろそろ秋も深まって来た頃でしょうか?対してシドニーはこれから春爛漫を迎える~はずだったのですが、異常気象のダスト・ストームが街を襲いあっという間にオレンジ色の火星のような景色になって世間を震撼させてみたりもしていましたがそれも1日で終わり一安心。なはずだったのに、週末は「嵐再びっ!?」と思われるほどおの強風が吹き荒れ、ナビの心も内心穏やかではなくなってしまったのでした。いつもだったら「あ〜あ、天気悪いな〜」と思うものの大して心が揺れたりしないのですが、今週末はいつもと違うのよーうっ!
その理由はズバリ「お花見!」
海外に住んでいたって中身は日本人!サクラの季節にゃぁ花見がしたくなるってもんです。しかし、あいにくとシドニーの街中にはサクラの名所はそうそうございません。「シティは無理でもカウラなら花見ができる」との情報を元に「多少の遠出だって構わないーっ!サクラを愛でてこそ春が始まるってもんよ!」と早起きをして、強風が吹き荒れる中を片道4時間強の日帰り長距離ドライブで体育会的花見をして来たのでした。
シドニーから片道4時間!
シドニー西部にあるオリンピック・パークを越えてそのままブルーマウンテンを目指して高速をブンブン飛ばすこと約2時間。時速110kmで走っているはずなのに、 正面に見える山がいつまで経っても大きさ変わらずちっとも景色が変わらない〜!広過ぎるぞオーストラリアッ!!
まずはブルーマウンテンを越えた大きな町、カトゥーン場を最初の休憩ポイントに設定。ミルクタンクの形をしたインフォメーションセンターとマクドナルドやKDC、レッドルースターなどのファーストフード店が並んでいます。
さて、ここからは田舎の景色を堪能しつつもかっ飛ばす車たちの波に乗ってドライブ後半。草を食んだりノンビリと寛ぐ馬や牛、羊がどんどん目の端を通り過ぎて行きます。急なカーブを越えると突然絵本の中で見るような「緑の中に小さな家が点在」の風景や一面の菜の花畑など、「疲れる傍から癒される」というなんとも不思議な体験をしました。ちなみに行き方はいたって簡単。まずはシドニーシティからブルーマウンテンを目指すモーターウェイ(M4)をひたすら走り、その後はバサーストを目指して32号線をひた走り、24号線の分岐点に入ったら後はひたすらカウラ(COWRA)の矢印に従うだけ。前もって地図を用意したのですが、ドライブ中は一度も開くことなく現地に着いてしまいました。週末の朝&田舎道なので渋滞にはまることなく4時間強でカウラに到着。本日のメイン・イベントはもちろんお花見なのですが、まずは先人に敬意を表して日本人墓地へのお墓参りから始めるとします。
「第二次世界大戦時の日本兵捕虜大脱走事件」という歴史的事件によりシドニー在住日本人の間で有名になったこのカウラという町。約8000人強という小さな町は第二次世界大戦中の捕虜収容所でもありました。最初はドイツ、イタリア兵を収容していたのですが、1942年には日本兵もそこに加わり最大で2000人近くの日本兵がいたそうです。オーストラリア側としては生活習慣の違う日本人に対して食事も特別に米や魚を用意するというかなりの配慮がなされていたようですが、やはり捕虜は捕虜。戦争教育が徹底していた日本兵としてはその立場に我慢がならなかったのでしょう。後に「カウラ事件」として知られる日本兵捕虜脱走事件が起きた1944年8月5日未明、500人以上の捕虜が一斉脱走を試みたのです。食事の際にこっそり持ち帰ったナイフやフォーク、レクリエーション用のバッドが彼らが持っていた唯一の武器。対するオーストラリア護衛兵は銃もナイフもふんだんにある。その日は明るい月夜で、塀を乗り越えたところで周りに隠れられる場所もなく、建物に放火したのが裏目に出て追いかける側からしたらどこに向かって逃げているかが一目瞭然。結局日本人死者231人、オーストラリア人死者4名を出すという最悪の結末を迎えてしまったのでした。
当時の捕虜収容所は現在のどかな牧場となっていますが、当時の様子を説明する看板が立っています。そしてカウラ市民とオーストラリア政府によって設置された500名近くの日本人戦死者を埋葬する墓地もこの近くにあり、シドニーから1963年に日本の領土として割譲されました(ただし主権はなし)。この日本人墓地の設置をきっかけとして日豪友好の架け橋となる日本庭園がKEN NAKAJIMA氏の監修によって1979年に作られたのでした。
さて、南半球最大の日本庭園「カウラ・ジャパニーズ・ガーデン」に到着!
入場料のA$9.50を支払って中に入ると、そこは日本!ただ庭園内を歩いている人が国際色豊かなだけって感じです。勾配をいかした敷地には桜を始めとした木が多数植えられ、真ん中の大きな池に向かって小さな小川が流れる様子を眺めていると、オーストラリアにいる現実をうっかり忘れてしまいそう。いつもは静かな日本庭園も桜祭りの1週間は大賑わい。期間中はイベント盛りだくさんです。タイム・スケジュールを見ると、相撲、空手、書道に茶道。おぉなかなか正統派!そして、顔をあげると目の前をアバンギャルドな着こなしをした浴衣や着物姿の人がご機嫌で凧揚げをしている~なんとも説明しがたい世界が目の前で繰り広げられているのでした。
空手の実演風景。サングラスをしての演舞は日本では見られない貴重な図かも!?
勾配のある敷地をノンビリ散策しながら水や風の音、遠くで聞こえる太鼓の振動を体感。エンジン音のない世界で風に吹かれるままに過ごす贅沢な時間だなぁ(ちょっと肌寒いけど)。この公園はクリスマス以外は毎日開いているそうですので、小旅行を兼ねてぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
いかがでしたか? 海外にいると「日本代表」的なこと聞かれることが多くありありますよね。この日もナビがフラフラ歩いていると、お琴の譜面の読み方や茶道、着物について聞かれることが多く、持っている知識を総動員した1日でした。先日日本に帰った際に総ざらいしておいたので、完璧ではないものの何とか体裁が保てる程度には答えられたかな?とちょっとホッ。
結局、桜を愛でつつピクニック的な花見というよりは長距離ドライブと歴史の勉強に加えてちょっとした国際交流を加えた小旅行、となってしまった感のある今回のお出かけ。花見としてはちょっと不完全燃焼の感があるので来年は早起きして「花見弁当」を持参の正統派花見を敢行したいと思います。以上、シドニーナビでした。
上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2009-09-28